GMチキンは鳥インフルエンザを食い止められるか?

Food Safety News メアリー・ロスチャイルド
2011年1月19日

オリジナル記事:Could GM Chicken Halt Bird Flu?
※下記は、この記事の仮訳です。

アメリカ連邦監査機関が遺伝子組み換え(GM)サケの承諾を行うかどうかという状況のなか、さらに論争を呼びそうなニュースが入ってきた。ケンブリッジ大学とエジンバラ大学の共同研究によって開発されたGMチキンについてである。

まず「サイエンス」に掲載された論文によると、遺伝子の操作を施されたニワトリは、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)を他のニワトリに伝播しない。このような特徴は、特に発展途上国において家禽を全滅させかねない大発生を食い止めるだけでなく、ヒトの間での感染の危険性を減らすこともできると科学者たちは言っている。

ネイチャーニュース」の記述によると、このニワトリは、H5N1の伝播を妨げるため、群れの中で一種の“ファイアウオール(防火壁)”の働きをするよう遺伝子操作されたものである。ブライアン・ウォルシュ記者は「タイム」において、そのプロセスを次のように説明している。「(研究者たちは)ウイルスが複製するために不可欠であるポリメラーゼという酵素に対し、デコイ(おとり)の役割を果たすRNAを鳥に生産させることができる遺伝子を特定した。ポリメラーゼは、ウイルスのゲノムと結合するのではなく、デコイ遺伝子に付着し、ウイルスそのものが自己複製し広がるのを防ぐ」と。

プロジェクトのリーダーであるケンブリッジ大学獣医学部のロレンス・タイリー博士は、この遺伝子組み換えについて、「鳥インフルエンザに対して完全な抵抗力のあるニワトリ開発の道への意義深い第一歩である」という声明を発表している。

エジンバラ大学ロズリン研究所の遺伝学者であり、共著者であるヘレン・サン研究員は、「この研究により鳥インフルエンザが重要な問題となっている世界の多くの地域において、経済保障および食料保障改善への礎を築くことができた」と言っている。

サン氏はまた、「遺伝子組み換えはワクチン接種より効果的である。それぞれの病気に対してやり方を変える必要が無いのだから」とも付け加えている。

過去7年の間にアジアと中東においては何百万羽という家禽が、鳥インフルエンザを食い止めるために処分されなければならなかった。鳥からヒトへの感染は稀ではあるが、ひとたび起こるとそれは致命的となりうる。WHO(国連世界保健機関)によると2003年以来516件の鳥インフルエンザ感染が報告されており、その内306人が犠牲となっている。

だが、インフルエンザをブロックしたGMチキンの生産がさっそく始まるとは思ってはいけない。生産開始には、監査機関による承認と消費者による受け入れという2つの重要なハードルを乗り越える必要がある。また、研究者たちによると、この研究は、ある概念を証明しようとする意図が含まれているそうである。

それでもなお、この研究への反応は予測できるものであった。遺伝子が組み換えられた作物や動物は本質的に安全ではないとする人たちや、遺伝子組み換えや他のバイオテクノロジーが、本当に人口増加し続ける世界への安全な解決策になるのか疑問に思う人たちからの反応である。

イギリスの有機農法活動団体である土壌協会の政策主導者、ピーター・メルチェット氏は、ウェブサイトにおいて次のような声明を発表している。「動物たちを非人間的な工場に拘束しておくことが鳥インフルエンザや口蹄疫などの病気の蔓延を助長しているのであり、この遺伝子組み換えに対するファンタジーは、単に間違った農業の手法を覆い隠そうとするものにすぎない」

「遺伝子組み換え作物から学んだことは、農薬に対して抵抗力のあるスーパー雑草や耐性害虫がいかに早く現れるかということだ。GM産業側はそんなことは起こり得ない、と断言していたにもかかわらずである。ウイルスは地球上でもっとも進化の早い有機体であり、GMチキンに対しても抵抗力を持つように、あっという間に進化してしまうだろう」

そしてこうも付け加えている。「新しいひずみをもたらすような競争では、ウイルスの方が新種のGMチキンを開発するより先んじてしまうだろう。ウイルスは遺伝子を組み替えようとすればするほど、それに応じてより毒性を増して進化しうるもので、人間の健康への、より大きな脅威となるだろう」

一方、この研究を後援している英国バイオテクノロジー・生物化学研究会議(BBRSC)のダグラス・ケル委員長は、「家畜の伝染病は世界的な食料安全保障への深刻な脅威であり、鳥インフルエンザのような病原体が人間へ飛び火して世界的大流行となる可能性は、国家の安全を脅かすトップレベルのリスクであるとイギリス政府も認めている」と声明文で言及している。

ウォルシュ氏は「タイム」において、「もし鳥をちょっと操作することで我々自身を来るべきインフルエンザの大流行から守ることができるのであれば、フランケンシュタイン的遺伝因子も価値があるかもしれない」としている。

(翻訳:岩瀨佳弥子)

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